漆黒で透過しない、江戸の薄硝子ができるまで

1956年に創業した田島硝子。

職人が1つ1つ丹精込めて仕上げる江戸硝子、江戸硝子に模様を施した江戸切子を製造しています。

 

今回kuros’では一見ガラスとは思えない、漆黒の黒色を纏った、

日々の暮らしを上質にする美しいグラスを作っていただきました。

 

田島硝子の黒は他では表現ができない、透過しない漆黒の黒。

「硝子を極限まで薄く吹いて真っ黒を表現することは不可能」

そう言われてきた通説を独自の研究を経て実現させることに成功しました。

 

今回は田島硝子の田島社長に漆黒のグラスについてお伺いしてきました。

 

美しい黒を作るために

まず、硝子を溶かす作業。

職人が17時に終業した後、硝子を溶かす作業が始まります。

硝子を溶かす作業は1520度までガラスの温度を上げる必要があるので時間がかかる。そして温度や湿度でかかる時間も変わってきます。

 

特に黒い硝子は金属加工物が多く含まれ、他の色の素材に比べて溶かすことに最も手を抜けない色なのです。

 

また、坩堝(るつぼ)の中で溶かしたガラス加熱を続けながら吹く作業に移るのですが、この壺は黒を入れてしまったらその後色が移ってしまうため他の色や透明な硝子には使うことができません。

さらに壺は消耗品で約2ヶ月程度で割れてしまうのです。

 

 

熟練された職人技

型吹き成形は1つ1つ職人の手作業で仕上げるが、作品のような一つ一つバラついていることでの味を求める世界では無く、手作業の中で出来る限り工業製品のような精密な薄さ、均一の仕上がりが求められる。

求められる定めた品質に仕上げるには職人の熟練の経験から感覚が重要になります。職人たちは数ミリ、数グラムの誤差を感じ取りながら吹き作業を行なっています。

様々な形、厚さ、大きさの硝子製品を作る田島硝子の職人たちは、その都度変わる内容をこなすことのできるプロフェッショナル集団なのです。

 

 

江戸硝子の灯火を消さないために

硝子工場は24時間火を絶やすことなく、職人の作業もとても精密で機械化ができないこともあり、どんどん減っていきました。現在では日本全国で硝子工場は10軒。東京は4軒のみとなりました。

 

私たち田島硝子は生き残りをかけ、200~300μの厚さにしても透けない黒を開発しました。黒い江戸切子を作ることを目標に13年前に開発に成功したのですが、現在では今回のようなグラスにも黒を使用しています。

ガラスは他の磁器や漆器等の素材と違い例え色ガラスでも透明性があるので、黒で墨色の黒を表現することは非常に難しいとされておりました。田島硝子は「誰が見ても黒」を作りたかったのです。

 

 

ずっと大切にしたいこだわりの逸品を日常に

今回のkuros’オリジナルのグラスは、真っ黒に出来上がったグラスにもう一工程フロスト加工を加え、あえて艶を出さず、マットに仕上げることで高級感を、そして一見硝子には見えないような、異素材感を表現。

職人の技が光る、薄く心地のよい口当たりと、黒い硝子の美しさを愛でながら愉しんでいただきたい逸品です。

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