「わたしと黒」VOL.3 大貫清香
私にとって黒とは一番遠くもあり原点に戻れる最愛の色なのかもしれない。
15年以上前、8年続けたOLを辞め初めて飛び込んだ憧れのフラワーショップのブランドカラーは【黒】だった。
まだ花にお洒落と言う言葉が結びつかなかった時代、そのLONDONのデザイナーが手掛けるフラワーショップは何もかもが斬新だった。
モノトーンでまとめられたモダンな店内には色鮮やかな花々がスタイリッシュにファッションをも感じるデザインでディスプレイされていた 。
黒いエプロンを身に着けた店員は花を素早く束ね黒のラッピングペーパーでそれを包む、その瞬間花達はまるで 魔法にかかった かのように1トーンも2トーンも色に深みを増し輝くのだ、花を黒のペーパーで包む などまだ信じられない時代だった。
そこで働く人々は自信に満ち溢れ少し気高くかっこよく見え新人だった私はそれに憧れた。
そこで幾年もの間懸命に働き私は退職した。
独立した今黒は私にとってだいぶ遠い存在になった。
今でも唯一身近に感じる時がある、それは婚礼会場に花を飾る時だ。
普段は滅多に着ない黒のスーツに袖を通し黒の靴を履き会場へと 向かう、心地よい高揚感と緊張に包まれながら人の人生の最良の日に色とりどりの花を添える、一つとして同じ結婚 式も同じ花もない。
会場の傍らから披露宴の様子をそっと見る事がある、飾られた花と共に幸せそうな 二人とその温かい空気感を感じ心の 底から安堵する。
そしてそんな時思い出すのだ、黒いエプロンをして懸命に働いていたあの時代を。
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大貫清香 プロフィール
JANEPACKER FLOWERS にて8年間、都内有名ホテルやレストランにて数々のウエディングのフラワーデザインを担当後、2013年に le coeulを設立。
お一人一人に向き合うフラワーデザインを大切にし現在はホテルやレストラン会場の広告のフラワーディレクション、ドレスショップ広告のフラワーデザイン、製作、ブライダルコーディネート、レッスン、ギフト、化粧品広告のスタイリングなど活躍は多岐に渡ります。
Instagram: @lecoeul_flower