「Discovery Japan」VOL.4 "伝統と挑戦”の澤井織物工場【スペシャル対談 第一弾】

創業約120年。東京都八王子市の小川が流れる土地にひっそりと佇む澤井織物工場。

澤井家は漢方医、養蚕業を経て現在の澤井社長で十九代目。澤井織物としては四代目に当たります。

(左)澤井織物工場4代目社長 澤井伸さん、(右)娘 澤井紘美さん

伝統工芸である“多摩織”の担い手でもある澤井さん。古くから着物の元となる生地を作る傍ら、現在は着物だけでなく、有名ブランドのストール、東京オリンピックの衣装となる生地の製作など、風合いやデザイン、澤井織物工場でなければ作ることの出来ない生地に注目が集まります。

 

kuros’バイヤー 山本:伝統工芸品である多摩織ってどのようなものを指すんですか?

澤井社長:多摩織はお召織、紬織、風通織、変り綴、捩り織の5種。その中の1種類 紬織を澤井織物工場では行なっています。
多摩織と名がついたのは昭和55年。周辺に織物工場が多くあり、地場ブランドとして1つにまとめるために5種で「多摩織」という名称が着きました。養蚕が盛んであったため織物工場が周辺に多くあり、織物文化が栄え、伝統工芸品としての名称がつきました。現在では多摩織の基準、ルールは2種あり伝統工芸士が作ったもの、シャトル織機を使用するなど新しい基準を採用したものがあります。新しい文化を伝統に取り入れていくことで新たな発展があると思っています。

山本:伝統を大切にするだけでなく、新たな取り組みにも挑戦されているんですね。澤井織物としての新しい取り組みがあれば教えていただきたいです。

澤井社長:着物だけでなく、90年代以降はストールに取り組んだことで新しい需要が生まれました。さらに現在は海外へ出向き、日本の織ならではの手触りのいいシルクストールなどを紹介しています。また、昔は八王子の街の中で織物が完結していましたが、現在後継の問題などで工場は衰退していくこともあります。
なので日本各地の染屋さんや協力工場と連携をとり、“国産”をテーマとしたアイテムを強化しています。

山本:過去に縛られずに、伝統を守り、新しさを取り入れているんですね。その中で大切にしていることを教えてください。

澤井社長:新しいことを恐れずにまずはやってみることを心がけています。例えばGoogleのプロジェクトジャガードに参入したこと。糸を開発しました。糸の中に銅線が入り、手が触れると反応し、通信できるようになっているんです。
また、オリンピックの衣装製作や都知事のスカーフの制作も担当しました。
生地の良さ、質感の良さから声がかかることが多いので、そこは強みになっていると思います。 

―伝統の中にこだわりと新しさを融合させ、唯一無二のメーカーとなった澤井織物工場。kuros’のストールは澤井社長の娘に当たる紘美さんに担当していただきました。

山本:紘美さんから見た澤井織物工場とは、一言で言うとどのようなものでしょう。

紘美さん:他の工場やメーカーと違うのは伝統的なこと、伝統工芸も行いながら、新しい素材にも挑戦するところ。古きもあり、新しいものもあるから融合することもできる、そんな会社だと思います。
あとは企画から制作までを職人一人が一貫して携わるところも澤井織物工場の特徴です。責任を持って担当をし、そのアイテムがいいものになるよう、皆で話し合っているため、私たちの軸がぶれないんだと思います。



―紘美さんは幼少期を着物を作る澤井織物工場の現場を見ながら育ち、大の洋服好きに。大学では繊維材料を学ばれ、現在は澤井織物として日々ご活躍されています。最新機器があるとは言えない澤井織物の魅力とはどのようなものがあるのでしょう。

山本:澤井織物工場には人の手がかかる古い織り機を使われていると思います。使い続ける理由、こだわりについて教えてください。

紘美さん:澤井社長がこだわっているからというのもあります。高速で織ることのできる機械もありますが、量をたくさん作りたいというわけではなく、いいものをしっかりと届けたい。だからうちは手織りかシャトル機を使用しています。

シャトル織機は手織りの延長線にあると思います。テンションを張らずに織ることができるため、ふっくらとした手触りに仕上がるんです。機械に11本手作業で細い穴に無数の経糸を通していく作業や、半アナログとも言えるようなパンチングで作る指示シートなど、いいものができるからこその苦労もあります。
現在の織り機は古い工場から譲ってもらってきたもの。修理をしてくれる方の高齢化も危惧されていますが少しずつ補修しながら大切に使用しています。

 少し話はそれますが、ものによっては全体の8割が下準備と言われる私たちの仕事。糸の選定から染色屋さんとのやりとり、糊付けの工程、シャトル機へのセットなど織り始めるまでの工程が重要で難しい。そして失敗せずに行うことが理想ですが、もしも失敗した時に経験数からリカバリーできることが本物の職人だと社長を見て感じています。

山本:手のかかる機械を使いながらもいいアイテムを作り、日々職人の皆様の腕も上がる分、質の良いストールが仕上がるんですね。

 

スペシャル対談第二弾は、kuros’特注ストールについて。
さらにkuros’特注ストールのおすすめのスタイリングをご紹介します。

>>続きはこちら 澤井織物工場×kuros’ 特注ストール企画【スペシャル対談 第二弾】